
草原あか牛の牛飼いたち vol.2
立脇 良基
Story
「牛だけではない」という選択――米づくりと放牧を組み合わせた生き方

立脇 良基(たてわきよしもと)
山口県出身。約20年の会社員生活を経て、阿蘇に移住。
農業・畜産ともに未経験で2022年5月から「阿蘇のあか牛・草原牛プロジェクト」(以下、草原牛プロジェクト)に参加し、研修をスタート。
現在は、農薬・肥料を使わない自然栽培米づくり(白川自然農園)を中心に、週3回、草原牛プロジェクトの業務に携わっている。
「頭で考えるより先に、自然と惹かれることが本当にやりたいことなんだと思います」
――立脇 良基
人生を変えた夢―広島での経理から阿蘇へ
こういうと不思議に聞こえるかもしれませんが、2020年の10月、鮮明な夢を見たんです。「このまま会社にいても、自分が本当にやりたいことは見えてこない」と。
目が覚めた後、ああ、俺もう会社辞めるなってその時、思いました。広島の企業で経理をやっていて、給料もあるし、なかなか決断がつかなかった。
でもその夢をきっかけに、半年かけて引き継ぎをして、2021年のゴールデンウィークに阿蘇へ引っ越しました。以前、両親と旅行で黒川温泉を訪れて以来、ずっといいなと思っていた場所だったんです。

草原にたたずむ牛に惹かれて
引っ越してきてしばらくは畑をやったりしながら、これから何をしていこうかと考えていました。
2022年の3月、ふと「牛飼いをやってみたい」と思ったんです。阿蘇の草原の中に牛がいる光景が、すごく印象に残っていたんだと思います。草原で放牧されている、そういうやり方の牛飼いをしたかった。
放牧畜産の研修先を探したら、紹介されたのがこの草原牛プロジェクト。
行ってみたら家のすぐ近くで、車で数分のところでした。「ああ、これも何かの縁があったのかな」って思いました。
研修で知った現実―向き不向きと、お米との出会い
独立に向けて牧野(土地)を借りる交渉などもしていたのですが、新規就農研修の終わりごろ、現実に直面しました。
3人がかりでも牛を思うように動かせなかったことがあったんです。ロープワーク(ロープの結び方)も実は昔から苦手で、「自分、これやっていけるかな」って思いました。だから、独立して牛飼いになる、っていうのはちょっと厳しいなと。
でも同時に、自然栽培でのお米作りを始めていました。農薬も化学肥料も、堆肥さえも使わない栽培方法です。種があって、芽が出て、植えて、大きくなって、実る。その一連の過程を見守るのが、すごく嬉しかったんです。地球環境との調和も感じられて。
牛だけで結構、時間と体力を使うし、同時に田んぼもやるのは身体が持たない。だから、私はお米に専念しようと決めました。
自然栽培米と週3のエサやり―独立しなくても牛とは関わり続ける
畜産農家として独立はしなかったけれど、年間を通じて週3回、草原あか牛の夕方のエサやりを手伝っています。
また、自分の牛を2頭を草原牛プロジェクトに飼養委託をし、一緒に世話をしてもらっています。
牛はやっぱり癒されますよね。すごく純粋で、エサをあげて食べに来るのを間近で見ているだけで癒される。それも、自然の中でのびのび過ごしているからだと思います。
自然栽培の米は今、9反(0.9ヘクタール)で栽培していて、将来的には3町(3ヘクタール)くらいまで増やしたい。耕作放棄地をお借りできることになって、田んぼを増やしています。
お米をメインにしつつ、できる範囲で牛とも関わっていく。今みたいな感じを続けていければなと思っています。


